初期視覚
Adaptation to Symmetry Axis --- Towards Understanding the Cortical Representation of Shape ---.
Yui Sakata, Ken Kurematsu, and Ko Sakai
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We performed psychophysical experiments to examine whether symmetry axis is an adaptable feature of the visual system.
Specifically, we tested whether the perceptual tilt of symmetry axis is altered by adaptation. We generated a set of stimuli
that consisted of mirror-symmetric arrangements of random dots. The stimuli were comprised of a small number of random dots
so that their symmetry axes were invisible. A pair of stimuli whose axes were tilted ±10o from the vertical was presented
for adaptation. Another pair of stimuli with a distinct dot pattern/contrast was presented without tilt. Using a staircase
procedure, we measured the apparent 0t0ilt of the symmetry axes. The results showed the significant adaptation to symmetry axis.
We also performed another set of experiment with natural contours as adapter, and observed significant adaptation.
V4細胞集団による図地の識別能力
蓮池 正晴、 山根 ゆか子(*1)、 田村 弘(*1)、 酒井 宏
( *1 : 大阪大学大学院生命機能研究科 )
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背景から対象とする物体から分離する図地分離は,中期視覚において最も重要な機能である。局所輪郭を所有する物体方向に選択的な反応を
示すBO選択性細胞が存在することが分かっている。しかし,自然画像中の輪郭は複雑であり,さらに図地境界が輪郭として与えられない場合が
多数あるが,その神経対応は明らかになっていない。本研究では、細胞集団が輪郭ではなくFigure/Ground(FG)を表現しているという仮説を検討した。
サルV4野を対象とした多点電極からの記録を基に,この仮説を計算論的に検討した。具体的には,FG決定に必要な情報がV4皮質細胞群に内包 されているかどうかを検討するために,自然画像輪郭に対する多数の皮質細胞の反応を記録し,これら反応から機械学習(Support Vector Machine) によるFG識別がどの程度可能であるかを実験した。この結果,多点電極で捉えることができた単一細胞からチャンスに近い識別率しか得られなかったが, 十数個の細胞反応を集合すると,有意な識別が可能になることが判った。
この結果は,V4において,FGが複数の細胞によるpopulation coding として表現されていることを支持する。
図地分離における大域性と局所性―眼球運動と心理物理実験から見る皮質メカニズムの究明―
卜部 みか、 酒井 宏
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ヒトは物体を知覚する時、網膜上に投影された2次元画像から、視野中の手前にある物体領域(図)とそれ以外の背景領域(地)を容易に区別することが出来る。
この大域的な視覚機能を「図地分離」と呼ぶ。また、図地分離に関連する神経機構の1つであると考えられているのが、物体領域と背景領域を分離する局所輪郭
からの図方向である。これはBorder Ownership(BO)と呼ばれる。先行研究で、このBOに選択的に反応を示す細胞が、脳内のV2に存在していることが示されている。
しかし、1つの細胞の受容野は狭く局所的(4°)であるため、視野全体で図地分離が生じる際には多数のBO細胞の反応が統合されていると考える必要がある。
あるいは、図方向知覚とは異なる図地知覚の皮質メカニズムが存在する可能性もある。しかし、これらの仮説についての十分な検討は行われていない。
また、ヒトの脳内における視覚処理は眼球運動と密接に関係があることが知られている。特に先行研究では、サルの図地知覚時における無意識下での眼球運動 (Saccade)とV1細胞の発火を記録し、これらの間に強い関連があることが示された。
そこで、本研究では心理物理的観点から図地知覚と図方向知覚の基礎となる皮質メカニズムを究明するために、それぞれの知覚における眼球運動を解析し、その 特徴から皮質メカニズムのアルゴリズムの理解を試みる。
図:本研究における図地知覚と図方向知覚の違い。図地知覚とは、刺激全体を見た場合に知覚される大域的な領域である。一方で図方向知覚とは、刺激中心の一点を注視 した際に知覚される局所的な図方向である。 |
特徴的注意がヒトの図地分離に及ぼす影響
沖 めぐみ、 酒井 宏
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私達は、目から入ってきた視覚情報の全てを処理するのではなく、その時々に必要とされる情報を効率的に取捨選択し処理を行っています。この機能を視覚的注意(Attention)と呼んでいます。視覚的注意にはいくつか種類がありますが、本研究では視野中の物体の色や形、運動方向といった特徴に対する特徴的注意(Feature-based Attention)に着目しています。
また私達の脳は、視野中の物体とその位置を認識するために図地分離(figure-ground segregation)と呼ばれる処理を行っています。図地分離とは、物体(図、figure)と背景(地、ground)を分離して知覚することです。
この特徴的注意と図地分離にどのような関係があるのかを調べるために、CGを用いて実験を行っています。CGで作成した視覚刺激(図A、B)をモニタ上でヒト被験者に呈示し、刺激中のブロックの組み合わせがどのように見えたかをマウスのクリックによって回答してもらいます。例えば、左側にあるブロックがはっきり見えた場合は、左クリックを押します。このような実験から運動方向への特徴的注意が、図方向の知覚にどのような影響を及ぼすのかを調べています。
図A 視覚刺激の例1。 | 図B 視覚刺激の例2。 |
一定の運動方向に注意を向ける。 | 図Aの刺激で注意を向けた後どちらのブロックが
はっきりと見えたかを回答してもらう。 実際には図A、Bともに、白枠・矢印は呈示されて おらず、ドットだけが矢印の方向へ運動している。 |
Shape Representation and Medial Axis
Quiros Ramirez Maria Alejandra、 羽鳥康裕、 酒井 宏
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Daily, we obtain information from the world around us through our vision. Every single image that our eyes capture includes objects that we can recognize in an automatic way. In order to be able to recognize these objects, first, it is necessary to perceive its shape.
Our interest in this aspect is to investigate and understand how shape is represented in a neural level. Currently, this research is oriented to the hypothesis of shape representation through Medial Axis: the group of points of maximal bitangent circles. It is commonly known as the skeleton of a shape.
Our laboratory has developed a realistic neural network model to study shape representation by medial axis. The model shows good agreement with the results of physiological experiments. Our current research focuses in the investigation to 3D shape representation in the brain, aided by medial axis representation method.
周辺変調効果によるゲシュタルト要因の検出メカニズムの研究
近藤 慧一、 酒井 宏
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ヒトは、日常風景から物体(図)と背景(地)を選び分けることができる。これを図地分離という。近年、生理実験によってサルの中低次視覚野に、Border
Ownership(BO、境界所有)選択性を持つ細胞の存在が明らかになった。この細胞の特性をするために、周囲の情報に基づいたBO決定モデルが提案されている。このモデルでは、BO細胞は輪郭の凸な部分、あるいは平行な2直線間を図として判断する傾向があることが示されている。
ヒトはシーン中のある性質を持つ部分や全体に対して、その構造を図として判 断する傾向がある。この構造はゲシュタルト要因(Gestalt Factor)と呼ばれ る。先述したモデルでは、この要因を検出するような機能は明示的に実装されて いなかったにもかかわらず、結果としてゲシュタルト要因(凸性や平行性)を図 として判断する傾向があった。これはゲシュタルト要因が、モデルのBO判定メカ ニズムのベースとなる周辺変調効果に起因していることを示唆する。
本研究で は、新たにゲシュタルト要因を数学的に定義することを試み、この要因が周辺変 調モデルによって実現されていることを計算論的に確かめる。
ゲシュタルト要因における平行性による物体認識
酒井 宏
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私たちの目には様々な景色が映りこんできます。そこにはたくさんのものがあり、その1つ1つを物体として認識しています。目に映ったものを物体として認識するときに、どのような特徴が利用されているのでしょうか。以下に簡単に説明します。
物体を認識するうえで重要な要素として、ゲシュタルト要因というものがあります。ゲシュタルト要因には、凸性・平行性・閉合性などがあり、凸な線分で囲まれた領域、平行な線分で囲まれた領域、閉じている領域はそれぞれ物体として認識されやすくなります。このゲシュタルト要因のうち、主に平行性に焦点を当て、平行な線分で囲まれた領域が、どれだけ図として認識しやすくなるのかを研究しています。
下の図は実験の流れを示しています。被験者に図のように画像を呈示します。被験者は赤い固視点を注視し、その後に表示される刺激の輪郭線が、右の領域と左の領域のどちらに属しているのかを、マウスのクリックによって答えます。この実験を繰り返し行い、平行な線分で囲まれた領域を、図として判断しやすくなるかを検討します。
BO選択におけるゲシュタルト要因と同期が与える効果の心理物理的研究
角 真登、 松本 隆二、 酒井 宏
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ヒトは物体とその位置を認識するために、視野中の物体領域(図)と背景領域(地)を分離して知覚する。これは図地分離と呼ばれ、人間の物体認識のプロセスにおいて最も重要な処理のひとつである。この図地分離を行う際に重要な手がかりとなるのが、輪郭のどちら側に図があるかを示す輪郭からの図方向である。これをBorder Ownership(BO)と言う。BO知覚は、より狭い領域が図になりやすい、周囲との明度差の大きい領域が図になりやすい、下から上に伸びる領域が図になりやすいなど、様々な特性によって規定されることが知られている。これらは、ゲシュタルト要因として知られており、その中でも凸性がBO知覚を強く促進することがわかっている。一方、最近の研究により、輪郭が同時に呈示されるとBO知覚が促進されることがわかってきた。これは、時間的な同期性がBO知覚に重要な役割を果たす可能性を示す。本研究では、輪郭の同期がBO知覚に与える効果に注目し、心理物理学的手法によってこれを検討する。具体的には、まず、輪郭のBO知覚誘導の程度をゲシュタルト要因を制御することによって定量的に規定する。そして、このBO知覚誘導が、輪郭の同期/非同期によって修飾される程度を心理物理実験によって測定する。
左図は実際に実験で使用する刺激である。この刺激のドットを同期させて輝度を変化させることで注視点(右図の赤点)のBOを誤認識するかどうか、また、同期率を変化させることで、どの程度の同期率でBOの誤認識が始まるのかを測定する。
50%の表示率とは、右図の白線のうち50%に白と黒のドットをランダムに配置し、残りを灰色で埋めたものである。