3次元形状知覚
輝度分布からの3次元形状知覚
明治 涼子、 酒井 宏
私たちは2次元の画像を見たときに、その物体の形や質感、撮影者との距離など、多くの事を読み取ることができます。なぜ、私たちはそれらを正確に知覚することができるのでしょうか。 我々は網膜からの入力を、これまでの経験で培ってきた制約条件と照らし合わせたり、知覚するのに効率の良い処理をしたり、処理された情報を総合的にまとめたりして、何を示しているのかを知覚しています。 しかし、その制約条件の詳細や、どのような処理が行われているのかはほとんど解明されていません。 本研究では、3次元形状知覚をするために、我々が輝度分布をどのように利用しているのかを明らかにすることを目的としています。その中でも、特に輝度分布の特徴の多くを占める陰影とハイライトの関連性について着目しています。それらを利用する際に使われる制約条件や処理の詳細を知ることができれば、皮質メカニズムが理解、初期視覚領野におけるコントラスト処理の理解が進展することが期待できます。 この目的のために、画像を呈示し、被験者の反応を計測して脳の処理を探る「心理物理実験」という手法を用いて現在研究を行っています。 |
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Edward Weston, pepper No.30,1930 |
視点光源でのハイライトの機能
村上 友佳子、 酒井 宏
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3次元形状を知覚するための有力な手掛かりに、陰影やハイライトがあります。これらは、ヒトが3次元形状を知覚するために重要な役割を担っています。
本研究で注目している視点光源というのは、私たちは日常生活ではほとんど経験することのない特殊な光源です。あえて挙げるならば、内視鏡画像や、真っ暗な夜道で車のヘッドライトのみでの走行、といった状況くらいです。
視点光源では、ハイライトは位置や形が光源に依存し、非常に特徴的です。通常の光源と視点光源でのハイライトのできる位置を下の図に示します。同じ位置から見た場合でも、ハイライトの位置がかなり異なっていることが分かると思います。
このような特徴がある視点光源での、陰影とハイライトが与える3次元形状知覚への影響について、心理物理実験で研究しています。
通常の光源 | 視点光源 |
刺激画像の例 |
絵画や写真等における、構図が人に与える印象
山崎 翔、 酒井 宏
The Triumph of Galatea(1511 RAFFAELLO Sanzio)
画家は絵を描く際、人物や静物を美しく描くだけではなく、それぞれのオブジェクトの配置、すなわち構図にも非常に気を配っています。これは、構図自体が鑑賞者に与える印象に大きく影響を与えるからです。これは写真においても同様であり、オブジェクトを変化させることができない分、絵画よりも構図に気を配る必要があります。
構図には、配置の形状、画面やオブジェクトの重心、群化、明暗分割等、多くの要因が関わっており、それぞれが異なる印象を人に与えていると思われます。
対称性 | 群化 | 明暗分割 |
本研究では、構図のどの要因が、どのような印象を人に与えているのかを、自然画像や単純図形を用いた心理物理実験によって調べます。