視覚情報科学  Introduction to Vision

詳細/正確にはシラバス・Manaba を参照

情報科学類・情報メディア創成学類 開設 2単位
標準履修年次: 3・4年      
春AB学期  火曜日  5・6時限  
担当教員: 酒井 宏 (SAKAI, Ko)     

概 要

人間の視覚系でどのような情 報処理が行われているかを概説する。目に写った2次元像を基にして、3次元構造の知覚や物体の認識といった高度な機能が、どのように脳内で実現されている かを初学者向けに解説する。まず、ハ-ドウェアである神経細胞の基礎を学ぶ。続いて、視覚情報が処理されていく順序にそって、網膜、初期・中次視覚、高次視覚と、そのプロセスを理解していく。講義と宿題をとおして「見る」ことの原理を体系的に学ぶ。

学習・教育目標

(1)ヒトの視覚系における情報の流れを理解する。
(2)初期視覚で画像が要素に分解され、中次視覚で再構築される原理を理解する。
(3)動き・奥行き・色が、視覚系でどのように処理されているかを理解する。
(4)物体を認識するためには、どのような情報や機構が必要なのかを理解する。
(5)特定の問題について、ヒトがどのような視覚特性を持つであろうかを、自ら考えることができる。

このようにして視覚系における情報処理の基礎知識を身に付ける。同時に、大学院において視覚科学・画像工学・神経工学等を専攻するのに必要な基礎理論を身に付ける。

授業計画

第1週    序論,神経細胞とシナプス
       視覚情報の流れ、大脳皮質・神経細胞・シナプスといったハードウェア

第2週 網膜・伝導系
      外界を網膜に映すメカニズムと、大脳皮質に送る前処理としての網膜での画像処理・圧縮:
    眼球、網膜、明暗コントラストの検出、同心円型受容野,ラプラシアン

第3週 初期視覚
    外界を輪郭で表現する大脳皮質第1 次視覚野(V1)、
    V1での情報表現:基底関数,Gabor filter/wavelet

第4週 初期視覚の文脈依存性
    神経細胞の非線型性、可塑性、文脈依存性、線分・輪郭の知覚

第5週  面の知覚
    第2次視覚野 (V2)、主観的輪郭、図と地の分離 

第6週 動きの知覚
    運動野 (MT)、動きの知覚、アパーチャ問題、神経活動同期

第7週 色の知覚 
    3色系色覚,色の恒常性、色の知覚・認識

第8週 3次元構造の知覚
    両眼視、遮蔽,陰影,絵画的手掛かり      

第9週 物体認識,注意
    IT野、 物体認識、顔認識,表現座標系,注意のメカニズム,視覚失認

第10週 視覚系の特徴・視覚科学の実際(臨床・生理実験・心理物理実験)


教材

スライド・板書を中心とする。主要なスライドはmanaba に掲載する。参考書は随時紹介する。図書館に多数あるので、各自で借り出して自習すること。

参考書

 視覚学会編「視覚情報処理ハンドブック」朝倉書店 (全般、参考図書)
 甘利・外山編「脳科学大 事典」朝倉書店(全般)
   (以上 2冊は図書館に計10冊程度ある。
 内川編 「視覚I」「視覚II」朝倉書店(全般)
 入 来・外山編「生理学, 1」文光堂 (序論、神経細胞、 網膜、視覚生理一般)
 Nicholls, Martin, Wallace「ニューロンから脳へ」広川出版 (神経細 胞、視覚生理一般)
 Bear, et al.「神経科学ー脳の探求」広川出版 (神経細胞、視覚生理一 般)
 福田・佐藤「脳と視覚〜何をどうみるか」共立出版(全般、生理学中心)
 宮下・下 條編「脳から心へ」岩波書店 (面、動き、物体認識) 

 P. M. Churchland「認知科学:脳科学から心 の哲学へ」産業図書 (全般)
 D. Hubel “Eye, Brain and Vision” ScientificAmerican Library(初期視 覚,全般)
 J. Simon, et al. “The VisualNeurosciences” MIT pr(全 般)
 S. E. Palmer “VisonScience” MIT pr (全 般)
 Wolfe, et al. “Sensation & Perception” Sinauer Ass. Inc. (全般:心理学中心)
 Kandel,et al. “Principles of NeuralScience” McGrawhill(全般:生理学中心、講義でよく引用する)
 Kandel, et al. “Essentials of Neural Science and Behavior” Appleton
 (全般:生理学中心、比較的やさしい)   
 L. Spillmann & J. S.Werner “VisualPerception” Academic Pr(全般:詳細だが若干難しい)   
 Gazzaniga, et al. “Cognitive Neuroscience” Norton(全般:わかりやすい絵がおおい) 
 Purves, et al. “Principles of Cognitive Neuroscience” Sinauer Ass. Inc.
 Snowden, et al. “
Basic Vision” Oxford Univ Pr (ユニークでおもしろい!

 読み物としては、藤田一郎「見るとはどいうこと かー脳と心の関係」、下條信輔「視覚の冒険」(立体 視)、乾敏郎「脳と視覚」(全般)、松田隆夫「視知 覚」(心理学)など。このほか、図書館に多数ある(主 に141.21、491などの書架)。

成績評価

manaba/シラバスを参照(レポートを中心とした評価をします)。

講義ではトピックスを紹介し、それをもとに復習・宿題によって自分で勉強するスタイルをとる。成績評価はレポートを主とする。講義での学習を基に,図書館などで自習することによって,与えられた問題にアプローチし,問題の本質に的確に迫る姿勢を問う。レポートはオリジナリティを高く評価する。

授業外の学習内容・方法

講義では、多数のスライドを 見せながら、その解説をする。よく話を聞くこと。しかし、判らないことがいくつもあるはず。大事そうなところを、一 つだけでも講義中か講義後に質問しておくと後でずっと楽。講義中は要点だけをハンドアウトやノートにメモしておき、講義の後で図書館にいき、参考文献を探して復習する。ハンドアウト・板書では、要点や数式だけを示す。毎週の講義のあと、早めにノートの整理もしておくこと。グループで復習することは妨げないが,レポート作成は必ず個別に行うこと。レポートのオリジナリティは高く評価する一方,他と類似したレポートは低く評価する。

予備知識・前提条件

教養程度の数学(微分・統計の概念が判れば問題ありません)。

教員連絡先

sakai  at  cs.tsukuba.ac.jp; 3C317

© Ko Sakai 2014