情報 / 情報メディア 特別演習 Ⅰ,Ⅱ   

アドバイザー教官:酒井 宏         sakai(*)cs.tsukuba.ac.jp, x5348, C317


分 野: 視覚科学,神経科学

テーマの例:

こちらを参照してください:http://www.cvs.cs.tsukuba.ac.jp/research.html
             http://www.cvs.cs.tsukuba.ac.jp/~ko/index.html

2021年度の注意: 今年度は担当しません。


アプローチ:

視知覚実験プログラムの開発と実験,機械学習(e.g., deep learning)による画像の解析,神経細胞・回路の解析,神経回路のシミュレーションなど.使えるもの:計算サーバ(36core, 3.8GHz, 150GB(増強中!)),GPGPU(計6000core(増強中!!)),暗室,立体視装置,視線追跡装置,4k 45” モニタ,ColorEdgeモニタ,Visage, カプチーノマシン(Saeco)など.

去年までの例: 

・注意のモデル作成とシミュレーション:同じ画像が違って見える!
・幾何学的錯視の心理実験:まっすぐなのに曲がって見える!
・3D-CG、やっぱり出っ張って見える!
・構図の解析
・3次元構造は陰が決める!


演習を履修しようか と考えている人へ:

  私の専門は視覚です.つまり「見る」ことです.私たちが外を見たとき,どこに何があるかは,なんの苦労もなく無意識のうちに一瞬で理解できます.カップにコーヒーを注ぐときにも,まちがってカップの外に溢してしまうなんて,まずありません.10年も会っていなかったクラスメートに東京駅の雑踏であっても,すぐに気が付きます.

 こういった「見る」機能は,私たちの脳に専用回路があって実現されているので,本人はなんの苦労もなく無意識にできてしまいます.では,こういった機能を計算機にやらせてみましょう.・・・ 実は,これがとても難しい問題で,今のコンピューターの能力をもってしても,まるで実現できていないのです.そもそも数学的にもとても難しい問題で,脳がどのようにして問題を解いているのかは,大きな謎です.

 この視覚の問題に,私と仲間達(研究室のメンバー)は,3つの方法でアプローチしています.ひとつは心理物理学的な方法で,人間にコントロールした画像を見せて,どう見えるか答えてもらう という実験的アプローチです.古くから知られる錯視もいろいろありますが、CGが発達してきた最近になって、新しい錯視が続々と発見されています.

 もうひとつは計算論的な方法で,視覚系のモデルを作ってシミュレーションしてみる,という計算論的アプローチです.心理実験で人間がどう見ているかを探り,それと生理・解剖学の知見を基にしたモデルを作って,脳が採用しているメカニズムやアルゴリズムを解明しよう,という訳です.自然画像などの解析も含まれます.

 あとひとつは生理実験とその解析です。視覚皮質の神経細胞からの信号を解析して,皮質で何が計算されているか,何がどのように表現されているかを探っています.

 もしも,こういった人の視覚や心・脳の機能に興味があって,なにか自分でプロジェクトをやってみたい,という人は,いちど訪ねて来てみてください.なお,私達の研究室では神経科学・認知科学の工学的応用は行なっていません.

 

演習のツール

(心理実験・CGデモ作成)

 コンピューターグラフィックスの作成には,2つの方法があります.ひとつはOpenGLなどをつかって作る方法.研究室には強力なグラフィックマシンが何台もあり,先輩達がプログラムをいくつも作っています.Stereo Goggle装置も5台あるので,TDLを上まわる3Dアニメも(その気になれば)作れます.

 もうひとつは,ray tracing や photon mapping という精巧な方法です。OpenGL などは手頃ですが,かなりいい加減な(物理的に正しくない)ad hoc な方法なのに対して,ray tracing や photon mapping は文字通り光線を追跡/photonをマッピングするという精巧な方法なので,よくコントロールした精緻な画像が作れます。様々な library も出回っていて,比較的簡単に使えます.

 心理実験を中心にするのであれば,実験用のツールがあるので,簡単なものであればプログラミングなしでも実験できます.解析は R を使います。

(モデル作成・解析)

モデル作成には,基になるシミュレーターがあり,python, C++などでプログラミングできます.Matlabのサンプルコードもいっぱいあります.本人の興味と技術によって,いろいろなモデルが作ってみれます.解析は,もっぱらMatlabを使っています。多様な関数が用意されていて,最新の解析方法を容易に使えます。並列演算・GPGPU利用も自動的にやってくれます。


© Ko Sakai 2014