V1神経細胞の時空間反応特性研究

その奥行き・運動知覚における機能:計算論的研究
- 勝又 詩織 ・ 酒井 宏 -



 日常生活の中で、私達は環境中の物体の運動(motion)と奥行き(depth)を 知覚しています。例えば、自分が歩行中に道路を横断しようとするときを考えます。このとき、道路を走る車などの交通を見ます。もし車がすぐ目の前に迫って いて、それが走っているならば、そのときに道路を横断するのを避けるでしょう。これは、自分を車に轢かれることから回避しなければならないからです。一方 で、たとえ車が見えたとしても、ずっと向こうを走っているならば、今横断しても身の危険はありません。車が自分のところまで来るのには、ある程度の時間が 必要だと判断するからです。また、すぐ近くを車が走っていても、自分と反対方向に走り去っている場合には、問題ありません。このように、私達は、視野の中 にある物体の奥行きと運動方向を知覚しています。私達は、このような、物体の運動と奥行きを知覚するメカニズムがどのようなものなのかを研究しています。 生理学的実験のデータを基にしてニューラルネットワークのモデルを構築し、そのモデルのシミュレーションを行なっています。今後は、このシミュレーション を基に、ランダムドットステレオグラムの奥行き知覚実験の生理学的結果をシミュレートするよう、拡張していきます。




 図は、複雑型細胞のx-tプロファイル生成モデルです。4つの単純型サブユニットの左 右眼の単眼視x-tプロファイル(左2列、いちばん上から4行目まで)の積(左から3列目、上から4行目まで)をHalf-Rectificationを 通して線形統合します(一番下の行、いちばん右)。これが複雑型細胞のx-tプロファイルです。このような、非常に簡単なモデルで複雑型細胞の反応特性を 実現することができます。