方位知覚 − 傾斜錯視

-  四十物大、酒井 宏  -


 線は最も簡単な対象(object)で、その方位または傾斜は、もっとも基本的な属性です。しかし、脳がどのようにして傾斜を知覚するのかは、良く判っ ていません。私たちは、心理物理実験と計算論的な解析から、対象の傾斜がどのようにして知覚されるのかを研究しています。特に下図のような傾斜錯視を取り 上げています。左端の絵では、長い線が平行には見えませんが、実際には平行です。真ん中では、斜めの線は互いの延長線上にないように見えますが、実際には 延長線上です。右では、中央の横線が右下に傾いているように見えますが、実際には水平です。ここでは、これらの錯視が起きる過程を実験的に検討していま す。そして、それらの結果を基にモデルを考え、大規模な第1次視覚野の神経回路網モデルを構築し、シミュレ−ション実験をおこなってモデルの検証をしてい ます。これまでの研究から、これらの錯視はいずれも線分の交差部分が引き起こす、大脳第1次視覚野の反応パタ−ンの特性に依存するものと考えられるように なりました。