陰影からの3次元知覚 

-  成島 和樹  酒井 宏   -



(The Venus of Milo)

人間は2次元画像から3次元立体構造を知覚することができます。上の画像を見て、すぐに石像であるとわかると思います。しかし、別の見方をすれば、これは白黒の濃淡からなる2次元画像です。白黒の濃淡が光による陰影の結果と解釈し、我々は石像という3次元立体構造を知覚しています。
  このように陰影は3次元知覚に対して有力が手がかりですが、人間の脳でどのように処理されているかは定かではありません。私たちは、陰影処理のメカニズムに対する示唆を得ることを目的とし、心理物理実験をおこなっています。
  代表的な例を挙げると、陰影にホワイトノイズと呼ばれる輝度変化を生じるノイズを加えたときの奥行き知覚促進の要因を検討しています。この実験では、下図のような刺激を被験者に呈示します。出っ張って見える(凸として知覚される)円図形がT字に配置されています。被験者は左右に呈示されるT字の向きが同じか異なるかを回答します。陰影による奥行きが知覚できるならばT字の向きがわかるので、見えるか見えないかで分ける事ができ、奥行き知覚を定量的に測定することができます。
  現在は輝度変化のノイズだけでなく、色相変化を引き起こすノイズを用いた実験もおこなっています(最下図参照)。