A03-17

筑波大学 CS専攻

酒井 宏

 

 本研究では,形状知覚の皮質メカニズムを計算論的に理解し,これを実画像に適応できる画像理解アルゴリズムとして提案することを目的とする。特に,形状知覚の柱となる2つの基礎機構,(1)局所的な図方向の自立的な群化, (2)注意による選択,について計算論的に理解し,(3)注意による群化の変調によって領域・物体が選択されることを基礎とした,知的な形状認知を実現するアルゴリズムを提案する。

 本研究は,膨大でそれ自身は無作為な局所情報を,どのように選択・統合して,意味のある大域的形状を知覚するかという,人の画像理解における本質にアプローチするものである。提案するアルゴリズムは,単に物理的な形状を検出するのではなく,画像全体のなかで注意を向ける位置・対象を選択し,人間と同様な画像理解(同じものを見ること)を可能にする。

 具体的には,図方向選択性細胞の反応が同期により群化する過程が,空間的注意・特徴的注意によって変調されることによって,知覚される図が決定されることを示す。特に,空間的注意による領域の選択・特徴注意による物体の選択を実現する。本年度は,局所図方向の同期群化による大域的面の形成に関する計算論的な理解と, 空間的注意による図知覚の変調と領域の選択に関する理解を進めることを目的とし,さらに特徴に基づいた注意による変調についても先導的研究を進める。

自然画像における形状認知:注意による領域・物体の選択