図方向決定因子の特定 -心理物理学的研究-

-  辻 義尚、清水亮平、酒井 宏  -


  視覚系の目的は、どこに何があるかを判断することです。このときの最も根本的な問題として、背景(background)から図(object)を切り分けることが挙げられます。これによって処理すべき対象がはじめて決定されるからです。しかし、図方向を決める因子は、単純化された図形について、経験的・定性的にしか説明されていません。
  本研究では、疑似ランダムブロック刺激を使用した心理物理実験を行い、図方向決定の難易を左右する要因について調べています。具体的には、生成した疑似ランダムブロック刺激について、それぞれの図方向判定に要する反応時間を計測します。その後、反応時間により判明した図方向知覚の難易度が、刺激内に存在するどの特徴と関係があるかについて解析します。
  下の図は、実験のパラダイムです。Blankの後に刺激位置を示すための赤点が現れます。次にBlankの後に刺激が現れます。被験者には刺激において赤点の現れた位置の線分のBO(Border Ownership:境界帰属)が上と下の刺激で同じかそうでないかを答えてもらいます。下の例では、上下の刺激のBOはどちらも左となります。